研究課題
過栄養時代には糖尿病が急増しているが、その発症には小胞体ストレスが深く関与している。糖尿病をきたすWolfram症候群は、原因遺伝子WFS1を欠損すると膵β細胞が小胞体ストレスに対して脆弱になって発症すると考えられる。我々はWFS1が動脈硬化にも関与していることを見出した。WFS1欠損マウスでは、カフモデルでのネオインティマの形成による動脈硬化と高コレステロールによる動脈硬化のいずれもが促進された。小胞体ストレスが動脈硬化と関わっていることは、小胞体ストレス反応経路の中で重要な位置を占めているCHOPの欠損マウスでも認められた。すなわち、CHOPを欠損するとカフモデルでのネオインティマの形成と高コレステロール血症による動脈硬化はいずれも抑制された。なお、このマウスでは大動脈の細胞接着因子と酸化ストレスが低下していた。骨髄移植実験を試みたところ、特にドナーの骨髄細胞のCHOPが欠損すると、動脈硬化を防止することが判明した。このことから、糖尿病・インスリン抵抗性・メタボリックシンドロームの状態では、膵β細胞のみならず血管壁においても小胞体ストレスが惹起され、さまざまな病態に関与していること、さらにその軽減は、総合的な治療法開発につながる。このように、我々が同定した糖尿病をきたすウオルフラム症候群の原因遺伝子WFS1が欠損すると、動脈硬化の点でも糖尿病・インスリン抵抗性・メタボリックシンドロームに関わることが明らかとなり、WFS1は新たな創薬ターゲットと思われる。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (10件)
Atherosclerosis 206
ページ: 168-172
Current Opinion in Lipidology 20
ページ: 363-369
Lancet 374
ページ: 264
Islet 1
ページ: 75-77
Diabetologia 52
ページ: 653-663
Brain Res 1263
ページ: 58-68
Internal Medicine 48
ページ: 1387-1390