研究概要 |
移植片の生着の維持のためには、個体の全般的な免疫機能を保ちつつ該当移植抗原に対する免疫応答のみを抑制した状態(ドナー特異的免疫寛容)を近縁者脾細胞を利用することで効率よく維持することに成功した。この結果は骨髄移植で置き換えた造血幹細胞はMHCの一部合致した脾細胞で脾細胞由来の造血幹細胞に置き換えられ、MHCの一部合致した移植片(皮膚)も拒絶されることなく正着し続ける。(Hayashi et al. Transplantation. 2007;84:1168-73)で報告した。この現症に関わる特定の細胞集団を特定することで、機序の一端を明らかにすることを主眼とした。ドナーの脾細胞中のT細胞によりレシピエントの造血系が破壊され、ドナー脾細胞中の造血幹細胞の生着と増殖がおきる。その際、レシピエントの造血系を攻撃する細胞集団と、ドナー脾細胞の造血幹細胞の増殖が同時に進行している。予想される結果として、全脾細胞の静注では静注後約2週目よりドナー由来細胞(b/k)が増加、レシピエント由来細胞(b)は減少する(脾細胞移植2週後から造血幹細胞の置換がおこる)。1.T細胞を除去した脾細胞静注では、レシピエントの造血系細胞の置換はおこらない。2.CD4+T細胞を除去した脾細胞移植では全脾細胞を静注した場合と比較し、移植後2,3,4週目でのレシピエント由来細胞(b)の割合が高かった。つまり造血系細胞の置換が遅延する。3.CD8+T細胞を除去した脾細胞移植では,レシピエントの造血系細胞の置換はおこらない。4.制御性T細胞を除去した脾細胞静注では全脾細胞を静注した場合と比較し、造血系細胞の置換の速さが促進される。以上4つの現象を検証することで効率よいキメラの維持および免疫寛容に関わる細胞集団を特定する。
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