悪性グリオーマの強い浸潤能と治療抵抗性を規定する重要な分子とそのシグナル経路を明らかにし、脳腫瘍の浸潤性の抑制および治療感受性の向上を図るための創薬を推進することを目的として研究を行った。以下におもな成果を示す。 (1)悪性グリオーマの浸潤能は細胞外マトリクスの産生能と極めて強い相関を示すことを見出しているので、マトリクスの産生を評価するアッセイ系の確立を目指した。EGF、FGFを添加し、無血清培地にて培養を行うことにより、ヒアルロン酸の産生量が飛躍的に亢進し、細胞が培養皿から浮遊することを 見出したので、この系を利用して各種低分子化合物によるスクリーニングを開始した。 (2)悪性グリオーマをマトリゲル中で三次元培養すると、多くの突起を出すことが分かった。この突起は接着分子CD44、メタロプロテアーゼADAM17およびヒアルロン酸合成酵素HAS3をブロックすることで、その伸長を抑制することができた。このアッセイ系を用いて浸潤を抑制できる化合物の探索を開始している。 (3)抗がん剤の効果を細胞の酸化ストレスの上昇で検知するシステムを構築し抗がん剤の効果を評価できる系を現在構築中である。 (4)マウス胎児脳より神経幹細胞及び前駆細胞分画を精製し、無血清培地中にてneurosphereを形成させた上でレトロウイルスを用いてさまざまな遺伝子を導入し、悪性グリオーマの動物実験モデルを作製中である。
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