両耳聴の脳内の階層性と可塑性の研究はa.主に動物の実験で行う。動物はラットあるいはネコを用いる。すなわち両耳刺激による聴覚誘発誘電位のファフィールド・ポテンシャルであるABR、MLRを用いて両耳干渉成分を明らかにし、その起源を脳内の聴覚伝導路から直接記録と聴覚伝導路の各中継核と聴皮質の破壊実験により、その階層性を明らかにする。対応させ明らかにすることで、その階層性を明らかにする。b.両耳聴の脳内階層性と可塑性と臨界期の解明のための症例を対象とした研究は、末梢性難聴患者と中枢聴覚伝導路に障害のある患者、並びに絶対音感のある人を対象として行う。すなわち、(1)両側小耳症は初めは多くは骨導補聴器1台で1歳より生活し10歳~12歳の間に両側耳介形成と外耳道形成を行い、初めて両耳聴を経験する。果たして両耳聴が成立するか、その可塑性を明らかにする。時間差(ITD)と音圧差(IID)のどちらが重要かも明らかにする。一方、例外的に両側骨導補聴で成長する場合がある。単耳骨導と両耳骨導で脳内の両耳聴可塑性を明らかにする。(2)両側先天性感音難聴児の両耳補聴器使用が片耳より優れているか否かを調べ、スピーカ法による音源定位の聴空間の範囲を調べる。(3)人工内耳手術を受けた小児に対し、片耳人工内耳反対側補聴器が真に両耳聴の役割をしているか明らかにする。両側人工内耳症例の両耳聴は時間差と音圧差のいずれの作用からか明らかにし、スピーカ法による音源定位の聴空間の範囲を調べる。(4)成人・老人の両耳聴の加齢による可塑性の老化を明らかにする。さらに(5)ABR異常な脳幹障害及び聴皮質、脳梁障害例に対して両耳聴検査を行い、ヒトにおける両耳聴の脳内階層性を明らかにする。(6)絶対音感者の両耳聴が相対音感者より優れたスーパーノーマルか明らかにする。(7)音楽家の方向感の感度を調べる。(8)MRIを用いてヒトの中枢聴覚伝導路と皮質中枢の髄鞘化を調べ、解剖学的に脳の階層性と可塑性を調べる。以上の研究を通し、ヒトの聴空間の拡がりを解明する。
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