研究概要 |
本研究の目的は、侵襲時にみられる血管内皮傷害に対する再生応答を末梢血中に存在する血管内皮前駆細胞を中心に定量評価すること、同時に血管内皮前駆細胞の再生分化機能、骨髄機能の経時的な評価を加えること、血管内皮傷害-再生バランスに基づいた全身性炎症反応および臓器障害の効果的な制御法を開発すること、である。平成19年度は、全身性炎症反応がみられる重症外傷、熱傷、sepsis患者を対象に、血管内皮傷害-再生バランスを経時的に定量評価した。血中に存在する血管内皮前駆細胞、血管内皮傷害に伴い流出する血管内皮細胞をそれぞれ特異的抗原(CD34, CD117, VEGF receptor 2)、(CD146, CD34, CD45(-))をマーカーにフローサイトメトリー法で評価した。血管内皮の活性化指標である血中E-selectin値、血管内皮の傷害指標である血中thrombomodulin値、von Willebrand factor値、各増殖因子(VEGFなど)をELISA法で同時に評価した。その結果、sepsis患者において血管内皮の活性化ならびに傷害は長期間持続しており、再生応答の指標である血管内皮前駆細胞数の増加、細胞表面のVEGF receptorの発現亢進、さらに血中VEGF値の上昇が見られることを明らかにした(Shock誌2007)。平成20-21年度は、腹膜炎臓器障害モデルにおける再生応答と細胞移植に関する研究を進め、骨髄間質細胞の血管内移植が臓器障害を軽減して予後を改善するかを中心に検討した。その結果、腹膜炎作成後の骨髄間質細胞血管内移植は炎症性サイトカイン産生を有意に抑制し、臓器障害を軽減し、生命予後を著明に改善することが明らかとなった。各臓器ごとの病理組織変化を評価後、論文にまとめて公表する予定である。また、再生応答の観点から、重症患者への適切な腸管内治療やクラッシュ症候群モデルにおける肺血管内皮障害に関する研究も進め、結果を公表した。
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