研究課題/領域番号 |
19209058
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山本 健二 九州大学, 大学院・薬学研究院, 特任教授 (40091326)
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研究分担者 |
筑波 知子 九州大学, 大学院・歯学研究院, 助教 (70336080)
川久保 友世 九州大学, 大学院・薬学研究院, 特任助教 (70507813)
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キーワード | 歯学 / 蛋白質 / トランスレーショナルリサーチ / 発現制御 / 薬理学 / 癌 / 免疫学 / プロテアーゼ |
研究概要 |
本年度は、前年度に引き続き、正常マウスおよびカテプシンE(CE)欠損マウスからマクロファージをそれぞれ調製し、エンドリソソーム系の性状や機能に及ぼすカテプシンE欠損の影響を解析した。その結果、カテプシンE欠損細胞では、オートファジーと呼ばれるエンドリソソーム系の蛋白質分解機構に著しい障害が生じていること、それに伴うユビキチン化した蛋白質や異常なマクロファージが蓄積していることが判明した。またCE欠損細胞では、ミトコンドリアの異常に伴う細胞内ATPレベルの減少と酸素消費能の減少が見られた。また、これらの細胞では、酸化ストレスの亢進と消去系の低下が観察された。こうした変化は、CE欠損細胞の走化性や細胞接着能に著明な低下をもたらし、免疫応答機能の著しい不全が誘導されていることが明らかにされた。一方、悪性腫瘍の発症・転移機構において、癌細胞におけるCE発現がどのような生理的意義を有しているかどうかをin vitroおよびin vivoの両系において解析された。その結果、CEを過剰発現させた癌細胞は、低発現の癌細胞に比して、in vivoでの増殖ならびに転移に有意な抑制が示され、個体の生存率も上昇することが明らかとなった。組織学的には、CE過剰発現癌細胞を移植して形成された癌は発達した膜様構造によって分断されており、よく発達した正常細胞や組織によって癌巣は取り巻かれていた。また、CE過剰発現癌細胞を移植した癌巣では活性化されたマクロファージが増大しており、in vitroの実験系でも、これらの癌細胞はマクロファージに対する遊走能が低発現細胞より有意に高いことが示された。以上の結果から、CEはマクロファージの機能の亢進を介して、生体防御システムに強く寄与していることが明らかとなった。
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