研究概要 |
本年度は,メタボリックシンドローム患者および健常者を対象とした断面疫学研究を行った。 対象者は,大阪大学医学部附属病院受診者のうち,メタボリックシンドローム判定基準を満たす者100名にコントロールとして健常者24名を加えた計124名とした。メタボリックシンドロームの判定は肥満,血圧高値,血清脂質異常,空腹時血糖の各項目を用いて行い,歯周病の診断は,臨床的アタッチメントレベルが4mm以上の部位を歯周病有病部位とし,歯周病有病部位割合が上位25パーセンタイルに含まれる者を歯周病有病者とした。また,循環器疾患の既往に関しては,冠動脈硬化症,脳血管障害および閉塞性動脈硬化症について問診を行った。 メタボリックシンドロームと歯周病の関連性については,空腹時血糖が〓110mg/dLの群で有意に歯周病有病部位割合が高かった。次に,各メタボリック判定基準項目と歯肉溝滲出液および血中のバイオマーカーとの関連性を調べたところ,肥満,血清脂質異常および空腹時血糖と有意に関連するバイオマーカーは多かったが,血圧高値と関連を示すものは少なく,また,血清脂質異常および空腹時血糖の2項目のみと関連するバイオマーカーは全く認めなかった。歯周病有病者では,歯肉溝滲出液および血中のIGF-1が有意に高かったが.この項目はメタボリックシンドローム判定基準項目とは関連を示さなかった。血中のレプチンも歯周病有病者で高く,これは肥満でのみ有意に高かった。さらに,循環器疾患の有無を従属変数とし,各メタボリック判定基準項目および歯周病有病者を独立変数とした多重ロジスティック分析を行ったところ,循環器疾患に対する有意のリスクを示したのは,肥満と歯周病有病者であることが明らかとなり,そのオッズ比はそれぞれ6.85と6.42であった。 来年度は,唾液中の歯周病細菌および呼気物質の解析データを加えてさらに疫学的解析を進めると共に,マウスモデルおよび細胞モデルを用いた,in vitroの面からもアプローチしていく予定である。
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