研究課題
資源へのアクセスと配分をめぐるローカル・プラクティス(LP)として、以下のことが明らかになった。1.隣接する民族間では、一方ではお互いの家畜を暴力的に略奪しあうという敵対的な関係が存在するが、同時に、交易や婚姻などの親和的な関係ももっている。隣接民族間には相手を「おなじような牧畜生活をおくる人びと」と認知し、相互に尊重しあう意識が存在し、また、具体的な相互作用をもっていることをとおして、ある種の共感をふかめる経験をしていることが、一見したところでは敵対する民族間の共存の基盤をなしている。2.ソマリアの内戦によってケニアに流入したソマリ人の多くは、ダダーブ難民キャンプで暮らしているが、地元民であるソマリ人とのあいだに、密接な経済的・社会的な関係を創出している。3.隣接民族による略奪ですべての家畜を失ったサンブルの人びとは、互酬性の規範に依拠したLPであるパランと呼ばれる物乞いシステムをとおして家畜群の再建を試みている。4.ガブラ・ミゴは現在、ひとつの家族が、老人を中心とする都市近郊の難民キャンプと、若者を主体とする集落とにわかれて生活しており、これは牧畜生活のなかで培ったLPを基礎としている。5.カクマ難民キャンプの周辺に住むトゥルカナのあいだでは、難民の治療者をふくむ多元的なヘルスケア・システムが形成されている。6.エチオピア西南部では民間資本による大規模な商業農場が建設されており、地元民であるダサネッチのあいだでは、年長者と若者のあいだに賛否をめぐる意見対立がおこっていること、また、こうした外部世界との関係においてダサネッチの人びとは自己の周縁性を内面化すると同時に、「家畜の人」という新たな自己アイデンティティを構築している。
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