研究課題
最終年度である平成22年度には、これまでの研究成果を総合して、牧畜諸社会に見られるローカル・プラクティス(LP)の共通性を高次の次元で抽出することを試みた。その結果、柔軟性、即興性、対面的コミュニケーション能力、相手の能動性を引き出す能力、ブリコラージュ能力という5点のLPが、リスクを軽減するための高次の在来技法として抽出された。また、こうしたLPを開発計画の実施に活用するためには、牧畜民自身の主体性を十全に発揮させる必要があること、そして、民族間の紛争と治安の悪化が開発=発展の大きな障害となっていることが明らかになった。また、2010年6-8月には東アフリカ牧畜社会の先端的な研究を実施している人類学者の一人であるJon Holtzmanをアメリカから招聘して共同研究をおこなうとともに、7月31日には京都大学で"Emerging Approaches to Understanding Violence and Social Transformation in East Africa."と題する国際ワークショップをHoltzmanとともに企画・実施し、紛争と暴力、開発の問題に関する討論を重ねた。平成22年度の現地調査によっては、以下の具体的な知見を得ることができた。1.ケニアのクリア社会では紛争の抑止と解決のために結成された自警団が一定の貢献を果たしていた。2.ケニアのダダーブおよびカクマ難民キャンプでは、地元の牧畜社会と難民のあいだに経済的・社会的な共生関係が構築されており、人々は創意工夫を繰り返しつつ生活を再構築している。3.地元民は病気に対処するために商店の抗生物質や難民キャンプの治療を選択する傾向がますます強まっている。4.ケニアのサンブルとポコットという二つの民族間では、2004年以降の争いで死者の総数は562人を数え、この紛争の主要な要因は政治家によるアイデンティティ・ポリティックスである。
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