研究代表者の山田は、CITES CoP13 (2004)で附属書IIに記載されたジンコウ属の利用と管理について、主要産地であるインドネシアのほぼ全域を踏査し、実態と問題点をあきらかにした。赤嶺は、おなじくCITESの俎上にあるナマコの利用と管理についてのエコポリティクスを参与観察するため、CITESの動物委員会(AC24)と常設委員会(SC58)に参加し、各国政府関係者、IGO、NGO関係者らと国際的管理枠組みについて検討をかさねた。長津は、インドネシア東部のウォーラセア海域を中心に、マグロ類とハタ類を中心とした稀少海産物利用の歴史的変遷、稀少海産物をめぐる移住の過程、それらの政治経済的背景について調査をおこない、これらの資源利用の変遷を、移住ネットワークおよび海域生活圏の生成過程に関連づけた。平田は、アジア大陸の乳文化一元二元論を検証すべく、ヨーロッパ東部のバルカン半島ブルガリアで乳文化に関する調査をおこない、「搾乳と発酵乳系列群の乳加工は西アジアに起原し、西アジア型の発酵乳系列群の形態まで発達した段階でアジア大陸周辺に伝播し、その後、主に生態環境に影響されて北方域と南方域でそれぞれ独特に発達した」と、先の仮説を修正するにいたった。市川は、アジア諸国の多くで、都市化に伴う農村人口の減少、高齢化の兆しがみられることに着目し、そうした社会現象が熱帯雨林利用におよぼす影響について、マレーシアのサラワク州において調査を実施した。その結果、人口減少・高齢化によって、農業の縮小、林産物採集や狩猟の頻度減少などがみられるものの、その現象は一様にみられるのではなく、村によって人口減少・高齢化が著しいところと、逆に規模が大きくなっているところもあるように、地域差が顕著であることが明らかとなった。阿部は東ティモールにおける有機コーヒーの流通、竹田は東南アジア大陸部におけるマングローブ土地利用、鈴木は越境する違法伐採の研究をおこなった。
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