研究概要 |
山田は,韓国で沈香と朝鮮人参について、中国四川省・雲南にて森林資源、アメリカ・ポナペ島にてマングローブ林について調査し、希少資源の保存、利用、その保全について体系的に調査した。赤嶺は、モロッコで開催された第62回国際捕鯨委員会(IWC62)に参加し、捕鯨をめぐるエコポリティクスの参与観察をおこなった。IWC62では、不毛な対立をくりかえしてきている。反捕鯨をめぐる言説は、いまや科学論ではなく、動物権や動物福祉に根ざしたものが中心となっている現状であり、こうした現状の打開策は容易ではないことが伺われた。しかし、だからこそ、異文化理解と文化多様性を背景にもつ地域研究が貢献しうる余地があるはずであることが把握された。阿部は、「食のコミュニティ」が一堂に会する国際ミーティングであるスローフード協会主催のテラ・マッドーラに参加し、1)食の安全安心、2)食材(資源)の多様性の保全、3)そのための伝統的生産技術の保全について議論した。食材という生態資源を保全するには、生産者と消費者の関係性を強化すること、スローフード運動の「消費者ではなく共生者である」という考え方が極めて重要であることが再認識された。具体的な成果としては、『関係価値』という概念を提示したことである。平田は、乳加工技術という文化の伝播論を検討するために、本来は乳文化圏には位置しない新大陸のペルーにおいて現地調査をおこなった。その結果、レンネットによるチーズ加工の技術のみが受け入れられ、それ以外は伝播していなかった。「ジャガイモ・トウモロコシ中心食」「傾斜地での労働軽減性」「年中温和・半乾燥性」が乳加工技術を伝播・変遷させたコアファクターとして考えられた。鈴木は、フランスのエクサンプロヴァンスの国立公文書館及びパリの国立図書館において仏領インドシナの森林地域における紛争と資源劣化に関する史料調査を行い、仏領期の警察史料から森林地域における反植民地運動の組織化に関する情報を新たに入手した。市川はサラワクの森林利用を、長津はインドネシアのサマ漁猟民の調査を継続した。
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