稀少生態資源のみならず、野生生物(wildlife)の保全に関しては、これまでも利用か保護かをめぐり、さまざまなディベートがかわされてきた。しかし、昨今では、動物福祉や動物権思想にもとづく動物保護の立場からの発言が政治力を増しており、科学的見地にもとづく資源管理をも否定しかねない傾向にある。こうしたイデオロギーに依拠する保護思想の拡大は、乱獲と同様に地域社会が涵養してきた「伝統」的保全知識と技術の喪失をまねく危険性をはらんでいる。本研究は、生物多様性と文化多様性の両立を視野に、生態資源の管理をめぐる環境政治(エコポリティクス)の動態を把握するとともに、グローバル化時代における地域在来の環境利用技術と知識の保全をめざすものである。
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