平成21年度は、(A):19年度に作成した発掘調査基準(遺構、遺物、土層図などの図化方法)及び整理基準(資料の分類・分析方法、実測方法などの方法)マニュアルの微調整、(B):関連陶磁資料の収集、(C):(A)で作成したマニュアルを活用したプラサート・スープラ、バイヨン出土陶磁の基礎調査及び整理作業、(D):(A)で作成したマニュアルを活用したバイヨン寺院の発掘調査及び寺院の建造過程に関する調査に加え、(E)カンボジアでは保存処理の難しい金属遺物を日本国内に移送し詳細な研究を継続している他、(F)JASAカンボジアオフィス内に設立されたバイヨン・インフォメーション・センター内におけるパネル及び発掘出土品の展示を通して調査成果を広く一般に公開する等、以上6項目を中心に調査・研究を実施した。これらは最終年度(平成22年度)の目的である「遺構出土陶磁と遺構の関連分析、年代の構築」に向けての基礎準備及び実践であった。 具体的には、国内作業として(A)、(B)、(E)を行い、この資料をもとにフィールド調査を実施した(C)。最終年度に計画する最終報告書作成に向けての基礎情報の蓄積・整理作業と、カンボジア人スタッフへの技術指導については、昨年度に引き続き重点的に実施した。(A)で作成したマニュアルは、遺物の整理作業及び発掘調査のオンザジョブトレーニング((C)、(D))にて活用した。研究資料解析とその補助にあたっては、高度な技術・判定能力を必要とするため、現地スタッフに対する技術指導は今後も継続していく必要がある。今年度の発掘調査は、バイヨン寺院外回廊南側外郭、3箇所にて行った。この調査は、1999年にJSAによって行われた北側ロングトレンチの未解明部分を補足するためのものである。この調査結果による図面の作成・出土遺物の整理作業は、現在継続して進行中である。
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