本研究課題は4年間の研究期間として認められ、すでに3年間研究を推進し、本年度はその最終年度にあたる。従って、今までの研究成果を検討し、調査に関しては現地における補充調査の実施、また理論検討については公開シンポジウムの開催を計画し、その研究計画に基づき研究を展開した。まず、研究課題である中国における民俗文化政策の理論的位置づけとフィールドワークにおける具体的課題を明らかにするため、8月上旬、中国北京市において、中国の多くの研究者の参加を得てシンポジウム「中国非物質文化遺産保護論壇」を開催した。研究参画者が全員報告を行い、研究上、調査上の種々の問題点を明らかにした。それを受けて、8月下旬に継続的に調査を行ってきた浙江省衢州市の二つの地域において最終調査を実施した。 研究参画者は秋以降相互に連絡を取り合い、また研究代表者と協議検討しながら、自己の研究課題にそって成果をとりまとめる努力を行い、年末には各人の調査成果を記した報告原稿を研究代表者に提出した。それに基づき、検討を重ね、原稿の補訂を経て、最終成果報告書『中国江南山間地域の民俗文化とその変化』(A4判366頁)を印刷刊行した。 本研究は、急激に変化しつつある中国村落社会において、民俗文化に対する認識や評価が大きく変わり、打破すべき封建制の残滓から保護すべき生活文化へと変わってきた状況を把握し、そのなかで展開する文化政策の様相とその及ぼす影響を実証的に検討することを課題としている。4年間を通してのフィールドワークによって、古鎮・古村保護、非物質文化保護という二つの動きが地域に与えている影響の大きさ、またその政策展開に対応する地域の動向を明らかにすることが出来た。
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