研究課題/領域番号 |
19251013
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
關 雄二 国立民族学博物館, 研究戦略センター, 教授 (50163093)
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研究分担者 |
井口 欣也 埼玉大学, 教養学部, 教授 (90283027)
坂井 正人 山形大学, 人文学部, 教授 (50292397)
鵜澤 和宏 東亜大学, 人間科学部, 教授 (60341252)
米田 穣 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (30280712)
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キーワード | 考古学 / 文化人類学 / 文明 / 複合社会 / 権力 |
研究概要 |
昨年度発見され注目を浴びた貴人墓の女性人骨および副葬品を理化学的に分析した。これにより被葬者は、当時の男性の平均身長(155cm)を遙かに上回る162cmであった点や頭蓋変形を持つ点が明らかになった。こうした異形性や、頭蓋変形自体が生後まもなく始めなくてはならないことを鑑みれば、被葬者が生まれながらに高い社会的地位を保有していたことが推測される。しかし、食性解析の結果は、同時代の他の人々と差を示していない。むしろ興味深いのは、副葬品である金製品である。蛍光X線分析の結果は、銅の混入を示し、合金という高い技術がすでに採用されていることを示唆した。またII期に出土量が多い銅製品(装飾用針、留めピン)について、製作過程を語る鉱滓を同定し、併せて鉱石とした珪孔雀石、藍銅鉱の産出地も発見することができた。総じて墓の被葬者の権力基盤は、祭祀に関わる金属生産であったことが推測された。 さらに本年度は、貴人墓周辺の発掘調査を行い、この墓が別の墓を破壊して築かれたことが明確となった。時代的に先行する墓は、文化を異にするパコパンパI期(前1200年~前800年)の終わりにあたる。これまで貴人墓が設けられたパコパンパII期(前800年~前500年)より、社会的地位の高い人物が登場するというシナリオが描かれてきたが、それ自体を見直すデータであるといえる。すなわち、権力の交代劇が紀元前800年頃に起きたと考えられることになる。
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