本研究の目的は、南米アンデス地帯に成立したアンデス文明のなかでも、形成期とよばれる文明初期(前3000年~紀元前後)に焦点をあて、新たな分析視点と分野横断的な手法を導入することにより、文明の成立過程を解明し、人類史の構築につなげることにある。 形成期は一般に国家形成以前の段階とされ、神殿建設とそこでの儀礼活動によって社会統合が図られた時期といわれる。本研究では、ペルー北高地に位置する大規模な神殿遺跡パコパンパの発掘調査を通して、権力の発生と、その変貌という新視点を先史社会の分析に導入する。この場合、権力を生み出す基盤として、経済、軍事、イデオロギーといった権力資源を想定し、リーダー(後の支配者)によるこれらの資源操作や、権力を行使される側の反応を考古学的に読み取る。 具体的には、発掘および周辺の一般調査を軸に、GIS(地理情報システム)を構築するための基礎データ蓄積作業を行い、次に出土遺物や遺構を対象に、権力資源解析を行い、最終的に理論構築へとつなげる計画である。
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