研究概要 |
スマトラ北部において,2004年スマトラ沖地震の歪み回復過程とスマトラ断層の歪み蓄積過程を解明するために,20089度に引継ぎGPS観測を実施した.この観測を解析し,同域における地殻変動を明らかにし,2004年スマトラ沖地震の余効変動とスマトラ断層における歪み蓄積過程と固着状況さらには同断層における地震発生ポテンシャルについて検討した. 1) 2004年スマトラ沖地震の余効変動 地震発生からすでに5年が経過し,変動は緩やかに減少を示が,現在でも最大で数cm/yrの南西方向への変位が観測された.地震時に2mをこえる変位が観測された観測域の北部で大きく,南部では5cm/yr以下と小さい.地震時に大きな滑りを示した断層セグメントの周辺で大きな余効変動が進行することを示す.遠隔地で観測された地殻変動から粘弾性の余効変動が推定されるが,近地で観測される上下変動は一致しない. 2) スマトラ断層における歪み蓄積過程と断層固着の検討 スマトラ北部で,現在支配的な地殻変動は2004年スマトラ沖地震による余効変動だが,スマトラ断層周辺では最大3cm/yrの右横ずれの水平変位が検出された.変形地形学から推定される断層運動とよい一致を示す,この地殻変動から断層では深さ15kmで固着し、より浅い部分でクリープ運動が進行していると推定される.断層を横断する2本の側線のうち,南東側の側線では表層のクリープ運動が推定されないことから,断層がいくつものセグメントから構成されることを示唆する. 3) スマトラ断層における地震発生ポテンシャルの検討 推定された断層すべり速度と最近の地震活動から,スマトラ断層北部では既にM6クラスの地震発生に十分な歪みが蓄積していると推定される.
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