研究概要 |
エジプトの最南のハルガオアシスにあるアルザヤーン神殿遺跡は,標高も最も低い地点にあり,水との関連性を指摘されている遺跡である。2000年度から物理探査による調査を開始し,2004年度からは発掘調査も開始した。我々は,周辺の水利環境も含めアルザヤーン神殿遺跡の調査を進め,オアシス地域での古代生活史の解明を目指している。当該期間の研究では,サハラ砂漠のなかのオアシスという辺鄙な地域で,調査期間も限定され,地形図の入手も困難な状況で,効率よく考古調査をすすめるために,科学技術,特に情報技術の導入に焦点をあてている。衛星画像の利用,GISによる地理情報と遺跡発掘や探査情報の統合,3次元形状デジタル記録システムを用いた発掘履歴の記録,遺構遺物の記録・図化などの従来技術の応用とともに,新たにミューチップ(μ-Chip)に代表される微小サイズのICタグ(RFID)による遺物・遺構管理システムの利用法も開発する。遺物の国外持ち出しが禁止されているエジプトでは,高々2ヶ月ほどの滞在期間の中で,すべてを整理記録することは難しい。そこで,発掘されたその場で,日時・位置・層位などの情報をRFIDに記録し,遺物に貼り付けや埋め込むことができれば,後日の整理のときに混乱も生じないし,散逸も防ぐことができる。さらには,修復過程の記録への利用法など,RFIDの考古遺跡調査への新しい応用技術の開発を目指す。
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