研究概要 |
2年目に当たる本年度は, 動物搭載型記録計(データロガー)によって新たに得られた時系列データを用いた解析を進めつつ, 時間周波数解析が簡便に行えるソフトウエアの開発を行った。研究協力者である坂本健太郎によって開発されたソフトEthographerは、市販の時系列ソフトウェアであるIgor Proの中で作動する解析ソフトである。ウェーブレット変換を用いた時間周波数解析を実行し、さらにk-mean法によるクラスター分析によって行動パターンの自動分類が簡単にできるものである。従来、研究者が水生動物の鰭を動かす頻度や体軸角度を調べる目的で加速度計を対象動物に取り付けてデータを得ていた。しかし、32Hzといった高頻度で記録される加速度時系列記録は,事前に意図していた情報以外の数多くの行動情報を含んでいる。Ethographerは, 客観的な基準に基づいて加速度波形を分類できるだけでなく、事前に予測していなかった発見を振り起こすといったデータマイニングにも貢献できる。Ethographerは日本バイオロギング研究会のホームページ上で公開した(2008年3月)。その後、研究会会員がそれをダウンロードして解析した研究成果が得られつつある。データロガーを用いたバイオロギング研究を進めるユーザーにとって、使いやすい解析ソフトの一つになりつつある。 本年度の対象動物は魚類・爬虫類・鳥類・哺乳類へとまたがっている。オオミズナギドリ調査(岩手県釜石市三貫島)、アカウミガメおよびアオウミガメ調査(岩手県大槌町)、マンボウ調査(岩手県大槌町)、カワウ調査(千葉県愛知県)、ペンギン調査(フランス亜南極基地のあるケルゲレン島)を実施し、野外環境下における動物より加速度時系列情報を取得した。
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