研究課題
H22年度は特にチルーの捕獲とARGOS発信機の装着に専念した。中国側(中国林業部西北瀕危動物研究所)の全面的なバックアップのもと、2週間をかけて5頭のメスチルーの捕獲に成功し、ARGOSの首輪を装着し、これまでの合わせると合計9頭のメスチルーの衛星追跡を行った。本年度の主な成果としてはチルーの繁殖に関する今まで解けていなかったナゾの一つである:『何故メスチルーだけが数百キロ~数千キロを渡ってわざとホフシル(可可西里)に到着し出産し、子育てをするのか?』の難題を解けることができた。従来の研究ではチルーの繁殖地は自然環境が厳しく、餌資源が乏しいと言われてきたが、我々の研究は初めてチルーのARGOS追跡フットプリントデータと同期の衛星植生指数(NDVI)の解析によって、チルーの繁殖地になっているホフシルのHuiten Nur(中国名はZhuonai Hu)周辺は一年中植生状態が良くて、且植生の光合成の活性を示す指標であるNDVIの値が中継地と越冬地より優越していることが分かった。この結果はこれまでのチルーの生息に関する研究を大きく発展させたことになる。この成果を近く、関連分野の国際学術誌に投稿する予定である。鉄道の影響に関して、本年度は今まで蓄積したデータの解析によって、チルーの生息に対する鉄道の影響を明らかにした。例えば、2008年の場合、繁殖地に向かう途中、約2カ月間チルーは鉄道アンダーパ付近で"徘徊"したことが分かった。また、同年繁殖を終えて越冬地に戻る途中にも、約1カ月間鉄道近くに"徘徊"していたことが分かった。この成果を国際誌Advance in Space Researchに投稿したところ、受理され、現在印刷中である(DOI : DOI:10.1016/j.asr.2011.02.015)。また、小型哺乳類の研究では鉄道沿線に生息する小型哺乳類のDNAの分析と同定を行い、動物相実態について明らかにし、その成果をBiogeography(No. 12, 29-37, Aug. 20, 2010)で公表した。人工衛星ALOSのデータ(10m解像度)、ASTER GDEM(30m解像度)、及びMODIS Snow Cover Index等を用いて越冬地、中継地、及び繁殖地における詳細な生息環境データベースも完成した。
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Advance in Space Research
巻: (印刷中)(DOI:10.1016/j.asr.2011.02.015)
IEEE IGARSS
巻: (In Press) ページ: 1-4
Biogeography
巻: 12 ページ: 29-37
酪農学園大学紀要(自然科学編)
巻: 35(1) ページ: 73-75
http://www.seimeikankyo.jp/sensing/index.html