1)タイ、ラオスで植物調査を行い、材料を収集した。ラオスから、従来考えられていたよりもはるかに多いカワゴケソウ科が生育していることを確認した。 2)Dalzellia gracilisの系統解析と形態観察を行い、この種が、Dalzellia zeylanicaとIndotristichia ramosissimaからなる系統の姉妹群であり、実生から不定シュートが生じるが、その後シュートから不定根が生じるなど、形態的に異質であることから、新属Indodalzelliaを提唱した。さらに、この群が端的な跳躍進化の例であることも示した。 3)マレーシ"Malesia"カワゴケソウ科の分類地理学的検討を行い、当地域には2属4種が分布することを明らかにした。また、系統地理学的解析から、アジアはトリスティカ亜科の1次的多様化の地域であり、カワゴケソウ亜科の2次的多様化の地域である2面性を示した。 4)タイのカワゴケソウ科の分類学的研究を行い、7種を追加した。その結果、タイには2亜科、10属、42種が分布することがわかった。これは、タイを含む東南アジアがカワゴケソウ科の多様性が極めて高いことを示すものである。ラオスでも多くの種が発見され、調査を継続中である。 5)ラオスのDiplobryum koyamaeの系統解析と形態観察を行い、この種が、カワゴロモ属グループの系統的な基部に位置し、根状の軸はシュートであって根がなく、しかも茎頂分裂組織を欠くことを明らかにした。加えて、胚軸からシュートが発生するという異質な形態形成をはじめて示した。総合して、この種に対して新属Hydrodiscusを提唱した。
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