研究概要 |
熱帯早生樹植林におけるN2O放出評価と緩和オプション提示を目的に、インドネシアの南スマトラ州で実施されている大規模産業植林地帯を中核フィールドとし、以下の4つのサブ課題を構成し研究を実施した。1)林内のN2O放出速度の空間変動を評価し最適観測手法を提示する。2)施業サイクル(植栽-加齢-収穫伐採)における積算N2O放出量を推定する。3)早生樹林土壌におけるN2O放出プロセスと関連メカニズムを解明する。4)早生樹植林におけるN2O排出緩和オプションを検討する。最終年に研究代表者がこれらの成果を統合し、新たなN2O放出源としての熱帯マメ科早生樹植林を包括的に評価すると共に、関連メカニズムを統一的に理解するための論理的枠組みとそれに基づく緩和オプションの提示を行なう。 本年度はN2O放出の林齢に伴う変化を明らかにするため、林齢を異にするアカシア植林地(0年生、3年生、5年生)を1セットとし、3ヶ所に計9林分、ならびに比較対照のため天然性二次林に設定した固定試験地において、定期的にガスと土壌のサンプリングを行ない、N2O,CH4,CO2フラッックスと土壌中の形態別窒素濃度を測定した。また、収穫直後の0年生3林分にはN2O排出緩和オプション検討のための処理試験区(4処理:ユーカリ植栽区、リン施用区)を設け同様の観測を行った。更に非窒素固定樹種であるユーカリの4-5年生3林分に試験地を設置し同様の観測を行った。 3年生、5年生アカシア林分土壌からは二次林に比較して明らかにより多くのN2O排出が確認された。さらに収穫直後の0年生林分からの著量のN2O排出は林齢の進行と共に低減傾向にあることを明らかにした。また、成熟したユーカリ林からのN2O排出は同齢のアカシア林よりも明らかに少なく、リターフォールを経由した窒素の投入量の違いがその重要な原因であることを明らかにした。
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