研究概要 |
マレーシア半島、パソ森林保護区での地下部の掘り取り調査データを基に、地下部現存量推定のためのアロメトリー式を作成した。掘り取り中に失われた根量を補正した最終的なアロメトリー式で推定した結果、地下部現存量は平均で66.8Mg/ha、地下部/地上部の比は0.17であった。2004年の強風撹乱後の林分で2007年9月と2008年1月に材の分解率を観測した。分解率は生木と枯死木との幹材硬度の差から推定した。分解率は、"幹折れ"木で、立枯れ部分と林床に倒れた部分で有意な差が無く、それらの分解率は折れ口高に反比例することがわかった。"根返り"木は、"幹折れ"木に比べ、分解率は一桁小さかった。"根返り"木の低い分解率は枯死後3〜7年の間に"幹折れ"木の分解率に移行すると判断した。これらの結果、2004年に強風で発生した大量の枯死木による、生態系からのCO_2放出が最大となるのは2009年から2014年の間になると予想した。伐採木の集積場とトラクター路で、土壌表層の細根現存量と細根生長量を調査した。伐採後は植生なしでも生きている細根が観察された。また直径2mmを超える細根は周辺の健全な森林と同程度の現存量があった。細根現存量は伐採後に減少し、伐採後30ケ月の時点での細根生産量は集積場よりトラクター路で多く、周辺の健全な森林の細根生産量より少なかった。炭素収支を推定するため,光や土壌湿度,地温などの時空間的変動によって土壌からの二酸化炭素放出がどのように変動するか調査した。林内,林冠ギャップなど異なる環境下で携帯型土壌チャンバーおよびCO2分析装置を用いて測定を行ったが,土壌水分や光環境よりも落葉落枝層の厚さや測定時の時間帯(気温)などによって大きく土壌呼吸量が変化した。これら地下部、細根、枯死木、土壌呼吸など熱帯林の炭素収支に関わる様々な要因を統合するため、さらに研究を続ける必要がある。
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