研究概要 |
半島マレーシアの熱帯多雨林における地下部を含む炭素収支を明らかにするために、天然林での地下部掘り取り調査や細根量推定のための土壌掘り取り調査、択伐林での地上部成長量調査などを行った。1平方メートルで深さ2mまでの土壌掘り取り調査区での地下部現存量推定値と、毎木調査により相対成長式で推定した地下部現存量は食い違いが大きかった。そこで各個体からの距離に応じて根量が減少するモデル式を導入することで、局所的な地下部現存量の推定も可能であることがわかった。すでに開発した相対成長式と、個体サイズ、土壌掘り取り調査を組み合わせることで、様々な空間スケールでの地下部現存量を推定できることが明らかになった。低地フタバガキ林に比べデータの少ない丘陵フタバガキ林の尾根部、斜面部、谷部のそれぞれにおいて、1m深までの細根量は、尾根部の約17Mg/haから谷部の7.3Mg/haに向かい細根量の減少がみられ、尾根部では表層10cmの層位に斜面部及び谷部の1m断面全体の細根量と同量の細根が集中していることが明らかになった。択伐後50年経た二次林で,1998年~2008年にかけて現存量増加速度の調査を行ったところ,森林の現存量は1.7%/年の成長率で増加し,天然林の現存量の約90%まで回復していることが分かった。二次林では伐採時に残存していた小~中経木が順調に生長したことが早期の現存量回復に寄与したと考えられる。このようにマレーシア半島の熱帯多雨林の炭素蓄積は択抜後、約50年で天然林の9割近くまで回復することが明らかになった。
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