大規模IPネットワークに生体内制御機構に基づく適応型ルーティング制御アルゴリズムを適応させるための手法の開発: 酵素反応フィードバック制御機構を組み入れた適応型ルーティングを小規模ネットワークで実験をおこなった結果、一部で起こったふくそうを回避するようにルーティングが変更され安定してデータを送ることができ、ネットワーク全体のトラフィックの負荷分散が実現できた。また、適応型ルーティングノードの数を最小にするための、適正配置アルゴリズムを開発した。それにより、100ノードのスケールフリーのネットワークトポロジーにおいて、約10%のみの適応型ルーティングノード配置で、DoSアタック障害によるパケット転送のふくそうを回避することが可能となった。しかし、より大規模系の場合、経路を大きく変更することができないなど、スケーラビリティーの問題が生じてきた。そこで、ネットワークを階層化することで、QoS overlayへ拡張し、そこに生体内フィードバック制御機構を導入するという設計を行った。具体的には、最下位のノード層のいくつかのノードを上位のエリア層の1つのノードと見立て、エリア層とノード層のそれぞれの層で代謝制御フィードバックを導入した経路制御を行う。まず、上位のエリア層で、エリア内制御パケットのデータを基にどのエリアノードに送るかを計算し、それを基に、下位のノード層の各パケットが経路制御される。これにより、ふくそう状態によって経路を大きく変更することが可能になり、大規模系へ拡張できる。耐障害能力を検証するため、いくつかのノード間の使用可能帯域を小さくし、データパケットのレイテンシーや、伝送経路を詳細に調べる。また、エリア内のノードはどの程度にすればよいのか、ネットワークのスケーラビリティーについても検討を行った。
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