研究概要 |
自由空間を通して香りを搬送し局所的な範囲に届ける,空気砲の原理を利用した「香りプロジェクタ」の最適化に関する基礎実験を行った.平成19年度は,まず研究環境のセットアップを行い,流体シミュレーションソフトウェアおよび渦輪の様子を詳細に観察可能な高速度ビデオカメラを導入した.また,空気砲を利用した物理的な実験を再現性よく行うため,空気砲を駆動するピストン・クランク機構を試作し,コンピュータ制御により押し出し量と押し出し速度を制御可能なシステムを構築した. 香りプロジェクタの設計最適化の一環として,空気砲から射出される渦輪に含まれる香気の濃さが開口部の形状によりどのような影響を受けるかについて,流体シミュレーションを行って調査した.その結果,開口部エッジを内側へ傾けた方が密度の濃い渦輪を射出できる可能性が示唆された.試作システムを用いてシミュレーションの結果を検証し,実際に開口部を内側へ傾けた方が濃い渦輪を射出することを確認した. 一方,空気砲から射出する渦輪に載せる微粒子の種類によって挙動が異なるかどうかを,実験により観察した.超音波振動で発生させたドライミスト(微小水滴),舞台用スモークマシンで発生させたフォグ,および線香の煙を空気砲から射出して観察・比較したところ,粒子の大きいミストとフォグは線香の煙と比較して飛距離が短い現象が観察された.従来の実験では無造作にフォグなどを利用していたが,香気に含まれる香料微粒子は,気化状態もしくはごく微細な粒子として存在するため,粒子の大きいフォグとはやや挙動が異なることが示唆された.今後,香りプロジェクタの最適化を行うにあたり,留意すべき課題である.
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