研究概要 |
自由空間を通して香りを搬送し局所的な範囲に届ける,空気砲の原理を利用した「香りプロジェクタ」の小型化,静音化,効率化について検討してきたが,検討項目が多岐に渡り過ぎるようになったため,今年度は小型化の手段として発案・システム構築を行った前面変動型扁平空気砲の挙動解析に集中した. 前面変動型扁平空気砲は,開口部のある前面を変位させて空気を押し出す構造である.待機時体積がゼロとなるため,空気砲本体部分のデッドスペースを必要とせず,射出毎に異なる香りを提供可能という特色を持つ.しかしながら,こうした構造の空気砲は一般的でないため,一般的な空気砲の代替として使用可能かどうかを検証する必要があった.このため,流体シミュレーションを用いて多様なパラメータを設定し,検証を行った. まず,同じ変位・速度で空気砲の可動壁を駆動した場合,前面変動型の方が一般的な背面変動型よりも渦輪の進行速度が速くなることが確認された.この結果は,実機での観察結果と符合する.また,前面変動型から射出された渦輪は途中からわずかに失速する傾向が確認された.一方,射出された空気のうち渦輪に含まれず軌道上に残留する「尾」は不必要な香りを空中に散逸させるため抑制されることが望ましいが,さまざまな射出パラメータ(体積,速度)に対する挙動を調べたものの,調査した範囲では尾を抑制する有効な射出パラメータを発見できなかった. 全般的に見た場合,前面変動型と通常型から射出される渦輪挙動の差は小さく,前面変動型はデッドスペースを大幅に削減しつつ,香り搬送の手段として十分に使用可能であることが確認された.
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