研究概要 |
本年度は,システムの基盤となる分散最適化技術に関する2つの課題に取り組んだ.以下,それぞれの内容と意義を述べる. 1.一般化相互割当問題のためのAdaptive DisLRP 一般化相互割当問題を解く従来の分散ラグランジュ緩和プロトコルでは,各財の効用値のスケールが変わるとその性能が劣化するという問題がある.本研究では,プロトコル実行中にオンラインで大域情報(上界値と下界値)を収集し,各財の価格の更新幅であるステップ長をその大域情報を用いて適応的に決めるAdaptive DisLRPという新しいプロトコルを提案した.Adaptive DisLRPは,大域情報を収集するためのコストは掛かるが,従来手法であるDisLRPU,および,その変形版に比べ,広範囲の問題例においてタイトな上界値を与える解に収束することを実験により示した. 2.分散制約最適化問題のためのDirected Soft Arc Consistencyアルゴリズム 本研究では,分散制約最適化問題(DCOP)の厳密解法を効率化するDirected soft arc consistencyアルゴリズムを提案した.DCOPの厳密解法では,一般に,Pseudo-treeを利用して最良優先探索戦略によるバックトラック探索を並:列に実行するが,DCOPの評価関数が広範囲の値をとる場合には,反復的な探索が増え,探索コストが増大する.これに対し先行研究では,動的計画法にもとづく前処理により探索の枝刈りに有効な評価関数値を推定し,さらに,推定値を利用するために探索アルゴリズム自体を加工して効率化を図っていた.本提案手法では,Directed soft arc consistencyアルゴリズムをPseudo-tree上でボトムアップに適用し,元のDCOPを,より簡単に解くことができる等価なDCOPに変換する,この前処理より,従来の厳密解法を用いても探索コストを十分に削減できることを実験により示した.
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