平成20年度に開発した実験システムを用いてHMDによる携帯型システムを開発するとともに、リアルタイム処理が行えるよう様々な最適化チューニング手法を検討し、若年ならびに高齢の被験者による様々な視覚刺激(視環境)でのフィールドテストを繰り返すことで、本システムの実用性を検討した。また、フィールドで使いやすく実用的なシステムを実現するために、キャリブレーション手法や質感再現について検討するとともに、本システムを知能的ユニバーサルデザインツールへと拡張した。具体的には、インターカラービジョンシステムの計算エンジンを用いてオリジナル画像から高齢者または色覚異常者の見えをシミュレートする変換画像を生成し、このコントラスト情報等から視認性マップをそれぞれ作成し、両者のカラーマップおよび視認性マップ値を比較することで、変換したことによって色が大きく変換した箇所や視認性が低下した画像部位を抽出し、変換画像に抽出部をマーキングできるシステムを開発した。また、問題箇所を自動的に抽出するだけでなく、変換画像において問題箇所の修正方法を示唆する機能を付加するとともに、色覚正常者のカテゴリカル色認識特性を考慮することで色覚正常者にも違和感のない配色を実現するアルゴリズムを考案し、デザイナーがどのように修正すればよいかを具体的に教示するシステムを開発した。さらに、変換画像ならびに視認性マップを作成する際、色変換だけでなく、空間周波数特性の加齢変化等も考慮することで、精度の高いユニバーサルデザインツールを実現するとともに、高齢者や色覚異常者に対して、視覚だけでなく聴覚や触覚によって情報補償する手法を提案し、その基礎特性についても検討した。
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