研究概要 |
本研究の目的は,「巧みさ」が必要とされる作業として「折り紙」を具体的に取り上げ,ヒトの手による作業を仔細に観察し,その作業の本質的機能を抽出した結果を基に同じ機能を実現できる機械を工学的に創生することで,「手の巧みさ」の本質的理解を目指すことである.本年の研究実績の概要は以下の通りである. (1)複数センサ情報に対応したロボットシステムの構築 前年度までに開発した折り紙ロボットシステムにおいて,既に装着している微小力センサに加えて,さらに別の指用の微小力センサを設計製作し,2本の指先からの情報を取り込めるようにロボットシステムを拡張した. (2)ヒトの直接教示の履歴に基づく環境の不確かさへの対処手法の確立 前年度で検討したヒトの直接教示データから紙の挙動の不確かさへの対処法を自動的にモデル化する手法を拡張し,正準相関係数による重みを導入することで,センサフィードバック則をセンサ信号と修正動作と相関が高い方向にのみ適用でき,かつその重みが滑らかに変化するようにした.また複数のセンサ情報と複数の制御参照点がある場合にか対応可能とした.また実験により,拡張された手法の有効性が確認された. (3)研究のまとめとマニピュレーション知のメタ理解 これまでの成果により,折り紙を題材としてヒトの直接教示の履歴に基づく環境の不確かさへの対処手法が確立され,ロボットによっても失敗せずに折り紙を折ることが可能となった.これらの成果から,「手の巧みさ」とは,失敗のなるべく起こらないようなノミナルな目標軌道を設定することと,そのノミナル軌道の周りにおいて環境の変動に対応するようなセンサフィードバック則を適用できることである,ということができる.これは,折り紙作業によらず,かつ人間,ロボットに関わらず言えることであり,一種のメタ理解であると言えよう.
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