研究概要 |
近年,私たちの身の回りにあるあらゆるシステムは,人間中心を意識したデザイン化が進んでいる。こうした中で,システムの有用性、実用性だけでなく,そのシステムを扱う「ユーザーの」満足度といった,人間の感情知覚,認知状態を測る客観的な評価法が求められている。知覚,認知を行うのは私たちの脳であり,この脳から得られる情報(脳活動情報)からダイレクトに知覚,認知状態を推定したいというのがこの研究の大きな目標である。特に,この研究では人間一システム間のコミュニケーションにおける重要な要素である視覚情報の「自然さ、現実感」と,脳活動情報の1つで,認知活動の有力な指標である事象関連電位(Event Related Potential:ERP)に着目して,視覚刺激の自然さや現実感とERPとの相関を調べている。人の倒立顔/正立顔,新奇物体の倒立/正立画像,不可能なポーズ/可能なポーズなどの刺激対を提示したときのERPを分析したところ,不自然/自然な刺激対の場合で,その間に有意な違いが見られた。また視覚刺激の形状による自然さだけでなく,記憶色とは異なる不自然な顔色/自然な顔色の間でも脳波に違いが見られる事を示した。今後は,このような視覚刺激の自然さや現実感による脳波の違いが,幼児に見られるかを調べることによって,発達上いつ頃その現象を不自然だと感じるか否かという問題を解決する手がかりになるのではないかと考えている。
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