研究課題
本研究では、脳波を用いた自然さの抽出に関し、いくつかの実験を行った。(1)眼幅順応による顔に対する不自然さの変化が、オドボール課題における事象関連電位(ERP)に与える影響を調べた。被験者が感じる自然な眼幅は順応に応じて変化し、それに対応するように、順応顔画像と標的顔刺激の眼幅の差に依存してP300振幅が変化した。この結果は,順応による被験者の主観の変化が,脳波のP300成分に反映されていることを示している。(2)ERPに見られる顔認知処理に与える色情報の影響とその発達的側面を検討するために、成人と乳児を対象に、自然な色の顔とそうではない青色の顔での知覚の神経相関を調べた。その結果、顔処理に深い関係があるERP(大人に見られるN170、乳児で見られるN290成分)が、成人と乳児ともに青色の顔に対してより高振幅を示し、色情報が顔認知処理に影響を与えること、また、色情報を含めた顔認知処理が乳児ですでに行われていることを示唆する結果を得た。(3)身体ポーズの自然さを生理学および心理学の双方の観点から検討する実験を行った。身体ポーズ観察時の脳波を計測し、神経デコーディングにより知覚対象を推定したところ身体の正立と倒立の識別はポーズの可能・不可能に関係なく79%、ポーズの可能と不可能の識別は正立身体では63%であり、不可能ポーズの55%より有意に高かった。同一の実験刺激と手順を用いて、知覚識別の行動実験を行い、神経デコーディングの識別成績と比較した。その結果、神経デコーディングの識別成績と知覚判断の成績が相関しており、神経デコーディングにより知覚に対応する脳活動を定量的に調査できることが示唆された。
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日本感性工学会論文集 8(3)(CD-ROM)