研究概要 |
(1)高次元関数最適化のための実数値GA 実数値GAの世代交代モデルとしてJGG(Just Generation Gap)を提案した。JGGは、従来の標準的なモデルMGGに比べて、収束速度および高次元への対応において極めて高い性能を有すること、また多峰性問題に対して頑健であることをベンチマーク実験により明らかにした。実数値GAの多親交叉の拡張形としてREX(φ, xb, n+k)を提案した。REXでは任意の確率分布φに対して親個体群の分散・共分散行列が保存されるようにパラメータが設定される。さらに、多峰性下での大域的降下方向という概念を導入し、この方向に子個体生成分布の中心をおくことで、探索速度の向上を図っている。REX(φ, xb, n+k)により、数百次元規模の関数最適化問題を実用的時間内で解くことが可能になった。 (2)多目的関数最適化のためのハイプリッド実数値GA GAは多目的最適化問題の近似解集合を効率良く求める手法であるが、高精度の解を得ることが困難であることが指摘されていた。本研究では、解集合がパレート最適解に近づくにつれて非改悪方向が急速に拡大するため、交叉とランキングが非改悪方向に探索を進め、パレート解から離れた解をシェアリングが選択しやすいことが、GA単独では高精度の解が得られないことを明らかにした。高精度の解集合を得るために、GAと高性能な局所探索手法であるパレート降下法をGA then LSの形で組み合わせる枠組みを提案し、高精度の近似解集合を効率よく見いだせることを実験により確認した。 (3)実数値GAにおける制約対処法 関数最適化の実問題は一般に複数の制約条件をもつ。GAによる最適化では実行不可能解を適切に利用しないと、探素が停滞してしまう場合があり、制約対処法が重要である。本研究では、目的関数の最適化と制約関数の充足化を同時に達成しようとする既存の制約対処法ではGAによる探索の停滞を解決できないことを指摘し、その理由を明らかにした。次に、パレート降下法と射影勾配法の考え方によって違反制約関数を単調に減少させることができることに着目し、すべての違反制約関数を効率よく減少させるパレート降下修正オペレータPDRを提案した。PDRは制約処理を操作対象としているため、多目的あるいは単目的であるかを問わず、関数最適化における汎用的な制約対処法として利用可能である。
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