本課題は申請者らが開発を進めてきたエージェントシミュレーションとゲーミングの両手法の混在利用を可能にする参加型の人工市場U-Martシステムを用い、市場制度が持つ市場における流動性供給機能についてシミュレーションを用いた実験的な分析を行うものである。U-Martシステムがこれまで採用してきた市場制度「板寄せ」方式は市場制度としては分かり易いが、現実の市場では部分的に採用されているにすぎない。そこで市場制度の比較分析を実施するために、日本の証券市場で標準的に用いられている「ザラ場」方式と比較対象として「マーケットメイカー方式」についてU-Martシステムを拡張する形でモデル化と人工市場システムの設計・実装を進めている。平成20年度は、前年度に開発した「ザラ場」方式のシステムについて、実際に実験協力者を募り、20名程度で集中的に取引実験を行いシステムの性能を評価した。そして、実験結果を踏まえて、高負荷状況でより安定に動作するようにシステムを改修した。さらに実際のザラ場での取引実験などを通じて、ザラ場取引が持つ特徴などの考察を進めた。さらに、市場への流動性をより供給しやすいと考えられるマーケットメイカー市場におけるエージェントの取引戦略などの考察も進めるとともに、予測市場など市場メカニズムを利用した集合知の形成などの関連分野についても研究を展開した。
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