研究概要 |
1.群発的修飾部位と散発的修飾部位に分類し,修飾部位の予測と,その周辺のタンパク質の特徴解析 (1)両者に対してサポート・ベクター・マシン(SVM)を用いた修飾部位の予測を行い,群発的部位では比較的近傍の位置特異的なアミノ酸の存在が,散発的部位では15近傍程度の比較的ひろい周辺部位のアミノ酸組成比が,有効であることを示した. (2)群発的修飾に関与する位置特異的なアミノ酸を具体的に求め,既知のP+1,-3以外に複数の存在を見い出した.いずれも,群発的修飾により顕著であった。さらに,アミノ酸配列に対する独立成分分析により,それらが独立に存在していることを明らかにした. (3)得られた2種のSVMを組み合わせることで,単一のSVMより高い予測性能を実現した. 2.タンパク質の構造的特徴との関連 (1)修飾部位の分布を調べた結果,タンパク質のドメインには少なく,天然変性(disordered)領域に顕著に多いこと,それらは特に群発的修飾に特徴的なことを見出した.膜貫通タンパク質では,いずれも膜外で修飾されていた. (2)定まった構造を持たないdisordered領域は,機能的にも意味がないと考えられていたが,近年,その機能が注目されている.本O型糖鎖修飾は,タンパク質の構造安定化や機能の多様性の発現に関与し,真核生物に多く見られ,進化的保存性が悪い領域に多く見られるなど,disordered領域に共通する特徴が多いことを指摘した. 3.分子生物学的実験の実施 SVMによる予測結果より,修飾の可能性が高いと思われる部位を,群発と散発から各1部位を選び,合成したポリペプチドを用いて,分子生物学的実験を行った.GalNAcと酵素を加えて反応物を得たが,カラムの洗浄に失敗し,質量分析による確認には至らなかった.反応物の一部は保管してあり,実験の再開で再度の確認を目指す.
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