研究概要 |
聴覚的注意の機構について,ヒトの脳波(EEG,32チャンネル)および脳磁界(MEG,306チャンネル)を計測し解析を行った。被験者(EEG:6名,MEG:4名,大学生,平均年齢22歳,右利き)は,(1)左耳に注意,(2)右耳に注意,(3)両耳に注意,(4)暗算(1000から7を引き続ける)の4条件下で聴覚オドボール課題を遂行した。聴覚オドボール課題は両耳にランダムに与えられる短音(逸脱刺激:50ms,1kHz,右耳20回,左耳20回)と長音(基本刺激:100ms,1kHz,右耳80回,左耳80回)の音列の中から,注意耳に与えられた短音の回数を数える課題である。暗算条件下では短音の回数は数えない。聴覚オドボール課題遂行中のEEGとMEGの事象関連電位(ERP)を調べると,EEGおよびMEG両者ともに刺激後200msまでは注意条件による電位の変化はあまり見られず,200ms以降,特に300-500msにおいて違いが見られた。注意を行った場合には,基本刺激に対するEEGにおいて,刺激後300msに陽性電位(P300)が両側の前頭部に現れた。また非注意基本刺激に対するEEGにおいて,刺激後300-400ms以降で,対側の側頭前部に陽性電位が,同側の側頭前部に陰性電位が現れた。逸脱刺激に対する活動では,400-600msで中心部から後頭部にかけて陽性成分が現れた。MEGの結果では,より詳細な脳部位における違いが現れた。MEGの解析およびEEG結果との比較に関しては今後の研究が必要である。
|