視覚探索は、刺激の知覚、注意や眼球運動の制御、標的の記憶表象と刺激とのマッチングなど、複数の処理要素を含んでいる。そのため、視覚探索における個人差や発達の違いは複数の要素の組み合わせによって出現している可能性がある。そこで本研究では、視覚探索の個人差や発達の違いを生み出している要因を特定するため、探索効率と他の課題成績との相関分析および視覚探索中の脳活動計測等を行うことを目的とした。 視覚探索における標的-妨害項目間類似性効果(標的項目と妨害項目が類似しているほど探索が困難になる効果)および妨害項目間類似性効果(複数の妨害項目がお互いに類似しているほど探索が容易になる効果)の個人差に着目して、提示されている刺激間の弁別能力や提示された刺激と記憶表象の弁別能力との関係性を検討した。その結果、視覚入力と記憶表象との弁別能力と妨害項目間類似性効果量との間に有意な相関関係が認められた。これは、視覚探索中の妨害刺激のグルーピングおよび排除に、入力された視覚情報と短期記憶表象との比較・弁別プロセスが関与していることを示している。また、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて刺激間類似性が視覚探索中の脳活動に与える影響について検討した。その結果、標的-妨害項目間類似性が高い条件において前頭前野に強い活性化(BOLD信号)が認められた。一方、妨害項目間類似性効果に特異的な脳活動は認められなかった。この結果は、標的と妨害刺激の弁別が困難な条件ほど前頭前野におけるトップダウン処理が必要とされることを示している。
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