人間は状況に応じて遂行するタスクを切り替えることで、環境に適応した行動が可能となる。本研究では、脳外科手術前後の患者の協力のもと、脳外科に固有の技術を援用することによって、タスク切り替えに関わる脳の機能を詳細に検討した。まず、慢性硬膜下電極を留置した患者にタスク切り替えの課題を課し、そのときの誘発脳波を記録したところ、左前頭葉のブローカ野前方部位から、構えの設定時に陰性電位が出現した。次に、29名の患者に、タスク切り替え課題を課し、課題成績と摘出部位との関連を調べた。その結果、構えの設定では中前頭回、構えの維持では下前頭回の損傷が課題成績の低下と関連していた。これらの結果からタスク切り替えが、左前頭葉のブロー力野を中心とした脳ネットワークによって担われていることが示された。
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