研究課題
本研究はウィルスを主たる研究対象とし、強い淘汰圧を受けた寄生種の中から適応度の高い変異株が出現し、これが集団に固定する確率を定量的に予測することを目的とした。寄生種の複雑な遺伝的多様性を測るために、配列の隣接サイト間のトポロジー組換え距離に事前分布を導入したベイズ階層モデルを開発し、この手法が組換えの位置と各部位の系統関係を偏りなくすることを確かめた。突然変異はランダムに起きるため、抵抗株の出現を正しく予測するためには、それらの適応度を定量的に評価することが重要な課題となる。遺伝子配列、立体構造とデータベースの情報を組み合わせ、ウィルスと受容体/抗体との結合能を見積もる方法を開発した。結合部位のアミノ酸は結合状態では内部に埋もれているのに対し、自由状態では表面に露出している。2状態における配列の対数尤度比により複合体の結合能を得る。結合能の変化を個体群動態モデルの係数の変化に結び付け、宿主集団の間に固定する確率の高い突然変異のタイプと出現のタイミングを計算する方法を開発した。SARSウィルスに本手法を適用したところ、突然変異のうちいくつかは、ワクチン接種を受けた宿主集団において高い確率で固定されることが予測された。本年度はプロジェクトの最終年度となる。プロジェクトを締めくくる理論・方法の論文3本を含め、実証分析を入れて10本の論文を学術専門誌上で発表した。3年間で23本となる。当初より手法の開発は2年間でほぼ完成し、最終年度は論文の刊行を主体とした成果の公表に重きを置くことを計画していたが、この計画は概ね達成されたと考えている。
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