研究概要 |
新統計法が2009年4月に完全施行された。改訂の柱の一つである統計データの利用促進と秘匿措置の実現のために,1.個票データの秘匿と公開のリスク評価方法の確立,2.表形式データの秘匿と自動秘匿プログラム作成方法の確立,3.秘匿データの有用性の評価方法の確立を本研究の目的としていた。 個票データのリスク評価では推定された母集団寸法指標を用いることが多いが,本年度もパラメトリック推定に関する新たな知見が数多く見いだされた。2時点以上で得られた標本から作られた複数の個票データや,層化抽出された標本から作られた個票データをリスク評価するために,既に本研究グループによって多重寸法指標の利用が提案されていたが,多重母集団寸法指標のノンパラメトリック推定法についての理論構築が順調に進み,ピットマンモデルを2次元に拡張したモデルについても,実データへの適用の可能性が報告された。昨年度,目的外使用を行った労働力調査の個票データから得られた種々の統計量について,時系列データとしての観点から新たな分析がなされた点も成果の一つである。 また,表形式データの秘匿措置の一つであるスワッピングに応用されるマルコフ基底を用いた手法についても進展が見られた。更に,個票データ利用の有用性を示す分析結果も報告された。 これらの研究成果については,同志社大学で開催された統計関連学会連合大会などの学会で報告を行うとともに,各種研究集会や研究会などでも報告を行った。2009年10月22日,23日には,統計数理研究所において研究集会「官庁統計データの公開における諸問題の研究」を開催し,本研究に関連する研究者,官庁統計の実務者とも意見交換を行った。
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