研究課題/領域番号 |
19300111
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
川口 泰雄 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 教授 (40169694)
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研究分担者 |
高田 美絵子 (森島 美絵子) 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 助教 (30435531)
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キーワード | 前頭皮質 / 海馬 / 錐体細胞 / アセチルコリン / ムスカリン / 細胞内カルシウム / SKチャネル / 過分極 |
研究概要 |
アセチルコリンは覚醒・認知機能に深く関する伝達物質であり、前頭皮質と海馬でも重要な働きをすると考えられている。新皮質は多様なニューロンタイプからできているが、アセチルコリンは皮質ニューロンのタイプごとに、投与時間・作用領域(細胞体・樹状突起など)に依存した固有の応答を引き起こすことがわかってきた。前頭皮質の錐体細胞についていうと、一過性のアセチルコリン投与に対して、5層のものは著明に過分極するのに対して、2・3層のものではそれはみられない。海馬にも領域ごとに興奮性の錐体細胞がある。今回、アセチルコリンを海馬錐体細胞の細胞体付近に一過性に与えたところ、CA3領域では過分極が見られなかったが、CA1領域では、M1型ムスカリン受容体、細胞内カルシウム上昇を介したSKチャネルによる過分極が起きた。 また、この過分極反応の維持には、電位依存性カルシウムチャネルを介した細胞外からのカルシウム流入が必要なことがわかった。前頭皮質では2・3層から5層錐体細胞への結合が主要な興奮性経路の一つなのに対して、海馬ではCA3からCA1錐体細胞へのシナプスが主な興奮経路である。皮質外への投射については、それぞれ5層とCA1錐体細胞が担っている。従って、アセチルコリンは、層構造下位の興奮性細胞の発火を一過性に抑制し、皮質外への出力を遮断することが示唆された。また、錐体細胞の電気的性質を調べると、CA1錐体細胞は5層錐体細胞と同じくh電流を発現しているのに対して、CA3では2・3層と同じくそれが見られなかった。アセチルコリン作用・皮質内経路・皮質外投射様式・電気的性質を合わせて考えると、前頭皮質2・3層錐体細胞はCA3錐体細胞に、5層錐体細胞はCA1錐体細胞に対応すると考えられる。
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