大脳新皮質は複数の層(レイヤー)からできており、各層の間は興奮性の錐体細胞で結合している。同じ層の錐体細胞でも投射先や生理的性質が多様であることが知られている。今回、スパイク発火のバーストや順応パターンを細胞内脱分極通電で調べたところ、前頭皮質5層の錐体細胞には3種類の発火サブタイプがあることがわかった。橋核や線条体に投射する5層錐体細胞はそれぞれ特有の発火パターンであることから、投射先に依存して生理的にも機能分化すると考えられる。次に、発火特性を同定した2個の5層錐体細胞から同時記録し、2/3層錐体細胞をグルタミン酸の短時間投与で発火させ、2/3層から5層錐体細胞への興奮性結合を解析した。同一2/3層細胞から共通入力を受ける確率が5層錐体細胞発火サブタイプの組み合わせやサブタイプ間のシナプス結合に影響されるのかを検討した。その結果、5層細胞が同一2/3層細胞から共通入力を受ける確率は、同じサブタイプペアーの方が異なるサブタイプペアーより高くなった。さらに、同じ5層サブタイプペアーでは、シナプス結合があるものが無いものより共通入力確率が高くなり、一方、異なるサブタイプペアーが共通入力を受ける確率は5層間結合の有無に影響されなかった。以上のことから、2/3層から5層への興奮結合が5層錐体細胞サブタイプやその結合に依存したサブネットワークを作ることがわかった。皮質下出力に依存して、皮質内局所回路が分化していると考えられる。
|