研究概要 |
脊椎動物中枢神経系発生の際の、神経細胞の分化機構、また、分化した神経細胞の機能についてはは不明な点が多い。我々は、ゼブラフィッシュを用いてこの課題にアプローチしている。本年度は、脊髄のp0と呼ばれる前駆体領域から発生してくる神経細胞の分化機構、および、分化した神経細胞の機能に焦点をあてて研究を進めた。まず、p0領域から生じてくる神経細胞はすべて、交差型介在ニューロン(軸索を脊髄の反対側へ伸ばすニューロン)であることを明らかにした。次に、神経伝達物質特性を調べ、グルタミン酸作動性型の興奮性ニューロンと、グリシン作動性型の抑制性ニューロンの双方が生じることを明らかにした。グリシン作動性の抑制性神経細胞(V0抑制性ニューロン)はおおむね一様な形態をしており、遊泳行動に際して、近傍の運動ニューロンと同期して発火をしていた。このことは、V0抑制性ニューロンは、遊泳行動の際に、体の動きの左右相反抑制に関わる神経細胞である可能性を強く示唆している。グルタミン酸作動性の興奮性神経細胞(V0興奮性ニューロン)は、軸索の形態的に、(1)上行性、(2)上行,下降、枝分かれ型、(3)下行性の3種類が存在していた。うち下行性神経細胞は非常に長い軸索をもち、遊泳行動の際に、近傍の運動ニューロンと同期して発火していた。興奮性であり、長い軸索を持つことを考え合わせると、このクラスのV0興奮性ニューロンは、遊泳行動の際に、体の長軸方向の協調した屈曲を作り出すのに役割を果たしている可能性が示唆された。
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