ADPリボシル化因子6(ARF6)は、形質膜のリサイクリングや細胞骨格の制御を介して多彩な神経機能に関与する低分子量G蛋自質である。ARF6はグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)の作用で活性化するが、近年、多様なARF6-GEFの分子種が神経系で発現していることが明らかになってきた。本研究は、神経樹状突起でのARF6シグナル経路の機能解明を目指し、Brefeldin Aresistant ARF-GEF(BRAG)ファミリーに属する新規Arf6-GEFであるIQ-ArfGEF/BRAG1に着目して以下の点を明らかにした。(1)遺伝子発現解析によりIQ-ArfGEF/BRAG 1が嗅球、大脳皮質、海馬、線条体などの前脳領域と小脳顆粒細胞に発現すること、さらにIQ-ArfGEF/BRAG1のmRNAは、海馬神経細胞の細胞体とともに樹状突起にも局在することを明らかにした。(2)免疫沈降法により、IQ-ArfGEF/BRAG1はPSD-95、NMDA型グルタミン酸受容体、カルモデュリンキナーゼIIαと複合体を形成すること、(3)免疫組織学的解析により、IQ-ArfGEF/BRAG1が、興奮性シナプスのシナプス後肥厚部に局在することを明らかにした。以上の結果より、IQ-ArfGEF/BRAG1は、 PSD-95を介してグルタミン酸受容体と複合体を形成し、シナプス後肥厚部に局在する新たなARF6シグナル制御分子であることを明らかにした。これらの研究成果はNeuroscience Research(2008)に報告した。以上、申請計画に従って確実に研究成果を得て進展させている。
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