脳内のストレス関連コルチコステロイド受容体には、グルココルチコイド受容体(GR)とミネラルコルチコイド受容体(MR)の2種類が存在し、いずれもホルモン誘導性の転写制御因子である。低分子脂溶性活性物質のコルチコステロイドとの結合により活性化され、細胞質から核へ移行し、ホモあるいはヘテロダイマーを形成し、標的遺伝子のホルモン応答部位に結合してその転写活性を調節することにより、発生、分化、記憶・学習、ストレス応答など多彩な作用を発揮することが明らかにされてきた。しかしながら、ストレスや概日リズムなどによりダイナミックに変動するホルモン環境に応答し、脳内でこれら受容体がどのような挙動を示し、遺伝子発現の制御をしているのか、という生物学にとって極めて基本的かつ重要な問題が個体レベルでは全く解明されていないのが現状である。平成21年度は、Muglia博士のグループから供与されたGFP-GRノックインマウスを用い、全脳レベルで、ストレス応答や概日リズムによるホルモン環境の変化に際してのこれら受容体の細胞内動態や発現変動を解析する予備段階として、ホルモン投与後に常法に従い灌流固定し、取り出した脳をwhole brainレベルで、二光子レーザー顕微鏡にて観察することを試みた。脳の表層から約200μmの深さ、すなわちマウスの大脳皮質第2層付近において核内に局在するGRを観察することができた。今後は、まず麻酔下で生きているマウスを二光子レーザー顕微鏡のステージ上に固定し、whole brainレベルでの観察を行っていく予定である。
|