研究概要 |
1.検索症例の収集と選択および臨床的解析をおこなった。群馬大学および関連施設の症例を中心に,研究に適切な症例を選択し,データベースに登録した。臨床情報の収集と病理学的解析を行ない,特徴のある症例については学会発表および論文発表をおこなった(Yokoo, et al.2007;Shono, et al.2007;Taomoto, et al.2007;平戸他,2007;大石他,2007)。 2.大脳膠腫(diffuse astrocytoma,oligodendroglioma,oligoastrocytoma)の形態情報をデジタル化して解析した。核の丸さおよび核多態性の指標としてのconditional entropyの解析をおこない,核の形態のみではdiffuse astrocytomaとoligodendrogliomaの間に有意差はないが,comditional emtropyにおいて有意差が認められることを証明し,論文発表した(Kinjyo, et al.2008)。 3.Pilocytic astrocytomaの海綿状領域に存在し,この腫瘍の増殖の主体を成す小型円形細胞に注目し,この細胞がOlig2を発現し,形態はoligodendroglia progenitor cellに類似しているが,FISH法による解析ではlp LOHを欠くことを証明し,論文発表した(Tanaka, et al.2008)。 4.膠腫の組織マイクロアレイを作製し,免疫組織化学的に解析したところ,diffuse astrocytoma,oligodendroglioma,pilocytic astrocytomaなど多くの膠腫においてOlig2陽性の小型円形細胞が出現していることに気づいた。この細胞は小型円形の核と狭いあるいは淡明な細胞質をもち,免疫組織化学的にはGFAP,NFP,nestinとの共発現はみられず,電顕的には細胞小器官の乏しい狭い細胞質を持っていおり,この小型細胞がグリオーマの共通母細胞であることが示唆される。この結果について学会発表準備中である(中里他,2008)。 5.世界保健機構がん研究施設との共同研究により,S100β/v-erbBトランスジェニックラットに発生する脳腫瘍の病理組織学的検討を行い,この腫瘍がヒトの膠芽腫およびoligodendrogliomaのモデルになることを明らかにし,学会発表(横尾他,2007)するとともに論文投稿中(Yokoo, et al.)である。
|