研究概要 |
本年度は脳腫瘍の形態、形質発現、遺伝子異常の観点から、腫瘍の特性解析を進めるとともに、現状の脳腫瘍分類の問題点を指摘してきた。さらに、腫瘍発生母細胞の解析を進めて一定の成果を納めることができた。 1.脳腫瘍の症例を関連施設より収集し、病理学的ならびに臨床的解析をおこなった。症例はデータベースに登録し、病理標本を作製をして臨床的ならびに病理学的解析を行ない、特徴のある症例については学会報告および論文発表をおこなった(Nagaishi, et al. 2010;他7件)。 2.グリオーマについて腫瘍細胞の形態学的、免疫組織化学的ならびに細胞遺伝学的解析を行ない、この腫瘍の組織学的分類に関する問題点を明らかにした(中里2009;渋井他2009;中里2010)。 3.グリオーマの発生母細胞に関する解析を継続しており、脳内のOlig2陽性細胞が単にastrocytomaとoligodendrogliomaの母細胞であるばかりでなく、pilocytic astrocytomaやglioneuronal tumorの母細胞としての役割があることも明らかにしてきた。さらにgrade II,IIIのグリオーマでは増殖能を持つ細胞の大部分がOlig2陽性であることを示し、この細胞のグリオーマ母細胞としての役割を明らかにした(Rhee, et al.2009)。 4.Glioblastomaの長期予後に関与する因子の解析し、多変量解析の結果からMGMTプロモーターのメチル化と年齢が予後良好因子であることを明らかにした(Sonoda, et al.2009)。 5.S100β/v-erbBトランスジェニックラットに発生する脳腫瘍の病理学的解析をさらに進め、論文発表した(横尾他2009)。
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