研究概要 |
目的難治てんかん原性病巣における病態形成機序を知る目的から,てんかん焦点として外科的に切除された限局性皮質形成異常(FCD)と結節性硬化症(TSC)の脳組織を対象に,細胞内情報伝達経路関連蛋白の発現と翻訳後修飾を解析した. 対象と方法病理組織学的に,FCD type IIB(dysmorphic neuronやballoon cel1を伴う)あるいはTSC(類似の異型細胞を伴う)と診断した各々5例の凍結生組織を用いた.Western blottingにより,mTORを介した細胞内情報伝達系の上流:tuberin,hamartin,Aktや下流:4EBP,S6,p70S6K,EF2の蛋白発現とリン酸化状態を検定した. 結果対照に比し,FCD,TSC共にtuberinおよびhamartinは減少しp-tuberinは上昇していたが,両疾患群に差は認められなかった.p-Aktは両者で上昇.p-4EBP,eEF2,p-eEF2は両群に差はみられなかった.p-S6は差がみられFCDの方がTSCより有意に発現上昇が認められた. 考察TSC原因遺伝子産生蛋白(TSC1:hamartin,TSC2:tuberin)は複合体を形成し,その後mTORから4EBPあるいはp70S6Kを介した蛋白合成系に関与する.またp70S6KからはeEF2を介した蛋白伸長系も知られている.それぞれ,リン酸化の有無による活性化/不活性化が行われている.FCDとTSCの両組織像はよく似ており,TSC1/2の発現量をみても両者を区別することは出来なかった.FCDではp-S6を介した蛋白合成系が活性化しており,異型細胞の形成に関与している可能性が示された.
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