Rho依存的アクチン制御ならびに神経活動依存性アクチン再編成と、神経回路網のダイナミックな機能再構築との間の関係については、まだ未解明な点が多い。そこで本研究計画においては、大脳皮質細胞、および小脳プルキンエ細胞の突起形態形成においで、活動依存性Ca^<2+>流入と低分子量G蛋白・アクチンシグナル経路がどのようにクロストークするか、という点を集中的に明らかにする。 これまでの研究に引き続き、本年度に入ってから、特に以下のことを明らかにした。 1.大脳皮質細胞において、膜挿入型CaMKであるCLICK-III/CaMKIgammaのアイソフォームの形態形成能を探索したところ、細胞質局在型のCaMKIα依存的に軸索形態の変化が制御されることを明らかにした。さらにこの形態変化の上流に位置する神経細胞形態誘導因子を複数同定し、各々の下流で活性化される低分子量GTPaseを明らかにした。本成果は、Ageta-Ishihara et al.として投稿準備中である。 2.海馬錐体細胞形態形成過程においては、アクチン制御が神経活動によって発生するカルシウム流人と相加的に作用することを先に報告したが、小脳プルキンエ細胞樹状突起においては、全く逆に、活動依存的Ca^<2+>流入とアクチン重合活性化が拮抗的に働く可能性を見出した。 この段階で、平成20年度若手研究(S)が採択されたため、本研究課題を廃止することとなった。
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