神経細胞における、足場タンパク質PSD-95による情報伝達調節機構の解明を通して、シナプス可塑性を担う分子基盤の特性と意義を理解することを目的とする。本年度は、(1)独自に開発したNMDA型グルタミン酸受容体(NMDA受容体)に結合しない、PDZドメイン変異PSD-95(1mD2mD-PSD95-GFP)を導入したノックインマウスを作成するために、単離した3種類のノックインES細胞を順次、マウス胚盤胞に導入した。キメラマウスを作成しさらにヘテロノックインマウス作出を目指した。最初に試みた2つのES細胞由来のキメラマウスからは、変異が入った産仔が得られなかった。3つ目のES細胞から得られたキメラマウスから、ヘテロノックインマウスを単離することができた。変異を導入したexon5領域を挟むようにプライマーを設計し、野生型と変異型を識別した。3系統のES細胞を順次、導入する必要があったために、予定より約6ヶ月程度、研究の進行が遅れた。(2)得られたヘテロノックインマウスは、発生初期にCre recombinaseを全身性に発現するヘテロマウスとの交配によってPGK-neoを除去する計画で、これをスクリーニングできるプライマーを確立した。neoを除去したヘテロノックインマウスを樹立した後に、体外受精法によるSPF化を行うと共に、Cre recombinase遺伝子を持っていない個体を選択した。(3)得られたヘテロノックインマウスの交配によって、ホモノックインマウスを作出した。(4)野生型マウス脳を用いてシナプトソーム画分、PSD画分を調製法を確立し、PSD-95、NMDA受容体、AMPA受容体、SAP102、SAP97などを検出する抗体の条件検討を行った。
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